僕らは、二人で手をつないで屋上に立っていた。
「高いわね。」
「だって十階だよ。それは高いよ当然。」
「そんな言い方ってないじゃない、ちょっとびっくりしただけよ。」
「僕だってびっくりしたよ。ここまで来て怖いからやめようなんて言われたら困るよ。」
「あらそんなに困ること?」
「当たり前だよ、かっこわるいじゃないか。もう遺書だって置いてきたんだし。」
「そうよね。」
「あんなクサイこと書いてそれを読まれたかと思ったら友達とか、親とか、どんな顔し
て会ったらいいか分からないもの。」
「うん、私も、スゴイいろいろ書いた。」
「だろ?だったら、もう、引き返せないよ。」
「とは、思うんだけど……高いなあって思ったの、それだけ!」
「今更そんなこと言わなくたっていいじゃないか。」
「いいじゃない言うくらい!」
「何をそんなに怒ってるんだよ?遺書を書くのも、この場所だって全部、君の言う通り
にしたんだよ?」
「そうよそうですよ!我侭で悪かったわね!!」
「自分で分かってるんだったらどうにかしたらいいだろ!」
「イヤね、何もそんなこと今言わなくたっていいじゃない!」
「いいや、今言わなきゃいつ言うんだよ!大体前から君の我侭には辟易してたんだ!」
「だったら私だって言わせて貰うけど!あなた自分で何にも決めないじゃない、今回の
ことだって全部私が言ったから決めたんでしょ!気に入らないことがあるんならちゃん
と言えばいいんだわ!」
「世の中、君みたいに何でも思ってること全部口に出せる人ばかりじゃないいだよ!」
「失礼ね、それじゃ私が全然我慢しないみたいじゃないの!」
「だからそう言ってるんだよ!」
「……思ったんだけど、やっぱり私たちって相性悪いわね。」
「……それもずっと前から思ってた。」
「……別れましょう、なんだかもうあなたとうまくやっていく自信ないもの。」
「……そうだね、それがお互いの為かもしれない。」
「今までごめんなさい。」
「僕こそ。」
「じゃあ、さよなら。」
「うん、さようなら。」
そうして僕らは最期の視線を交わし、つないだ手を離したのだった。
end
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