記憶



思い出すのはいつも夏だ。

何かをきっかけにふと心が過去へ飛ぶとき、
思い出すのはいつも夏の光景だ。

青い空。白い雲。濃い緑。眩しい太陽。
乾いたアスファルト。舞い上がる砂ぼこり。色あせたブロック塀。
水玉の包み紙の中のソーダ味のアメ。
小さな裏庭の湿った土。

心が過去へと飛ぶとき、今の私に意味はなくなる。
強い夏の日差しにさらされ、現実が剥がれ落ちていく。

「いつか戻れなくなる」

そう思いながら、私は夏を思い出す。