月の話


満ちた月は
それは美しくつよく
魅入られるばかりに
晧晧と美しく
けれどそれは
あまりにも美しく
わたしにはわずか
つよすぎるようで

半ばの月は
それはそれはまっすぐ
ため息の出るほどに
誠実に輝いて
けれどそれは
息のつまるほどで
わたしにはやはり
たえられぬようで

三日の月は
それは愛らしくほそく
誘うかのように
輝いてゆれて
けれどそれは
愚かしいばかり
わたしにはどうも
ものたりぬようで






わたしの好むのは
すこうし欠けた
満ちきらぬ月
満ちたかと見えて
どこか足りない
いつわるようで
不安にさせる
すこうし欠けた
満ちきらぬ月
それが
わたしは何よりも好き