あなたのココロに。
絡みつく空気、じっとりとした汗。
少し長くなった前髪をかきあげながら重い目蓋を開ける。吸い込んだ空気が喉にいがらのようにぴりぴりとささって、それで随分と喉が乾いていたことに気が付いた。起き上がる仕草よりも早く扇風機のリモコンに手が伸びるのは殆ど無意識だ。
小さい電子音が鳴って、扇風機がすぐに部屋の生温い空気をかき回し始める。
枕元の時計を見遣れば、午前十一時過ぎ。朝、というにはもう遅い。
依然ベッドの上に横たわったまま彼女は大きく伸びをした。生温い扇風機の風は、それでも、寝汗をかいた身体には心地良い。そのままの姿勢でベッド際の窓のカーテンを引っ張ると、白い、眩しい光が飛び込んできた。それでようやく、それまでの緩慢さを振り払う勢いで起き上がり、立て付けの悪い窓を思いっきり引き放つ。
蝉時雨。
強い日差し。
朝寝坊。
汗ばむ肌の感触。
何もかもが夏だ。夏でいっぱいだ。夏は終わらない。
―夏休み。
さあ、今日は何処へ行こうか?
ココロの旅、ココロの癒し、夏はココロの傷薬。
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